この話は平成11年4月にあった話です。まだ田原市に合併前の田原町内の話です。渥美町の江比間に住んでいるY氏が、又困難事?を頼みに来ました。田原町内の先生に建物表示(表題)登記を依頼したところ、他人の土地の上に建っているので建物表示登記が出来ないと言われ断られたとのことでした。それで、私のところに来て何とか建物表示登記をして欲しいとのことでした。弟の土地家屋調査士に早速現場に行かせました。案の定、他人の土地の上に建っているからだめだと言い出しました。それで私も一緒に建物の所有者に会いに行き直接所有者に会って話を聞くことにしました。 その前にその建物を見ておくことにしました。その建物は、幅10メートルもある県道から2メートル位離れたところに建っている、30年か40年ぐらい前に建てられた古い建物でした。他人に貸すため中をリフォームしたそうです。そして他人に貸すためには、どうしても建物登記をしておきたかったのです。所有者の自宅はすぐ近くにあり、簡単に分かりました。土地と建物の所有者は70才を過ぎた夫婦でした。「今建っている土地は買ったのではないですか?」と強い言葉使いで聞いたところ絶対買ってはいないとの返事でした。私も一瞬これは登記が出来ないかなと思ってしまいました。実を言いますと、私の知ってるある先生はこの様な他人の土地に建っている建物を上手に私有地に溶け込ませて私有地に建っているようにする登記が得意な先生がいまして、私もこの様な表示登記を偶然見つけては常日ごろから感心をしていました。しかし、弟の土地家屋調査士も真面目な堅い男ですので、私有地に溶け込ませる様な建物表示登記をすることなど到底出来ませんし、私からお願いしてもやってはくれないでしょう。私も今回だけは期待に応えることが出来ず、前に座っている依頼者の夫婦にこの仕事を断るのかと思いました。それでもう一度,公図を近くに持ってきて5分、10分食い入る様に見つめました。昔、このようにして東三事務所の課長さん達の前で、10分ぐらい航空写真を見つめて納得できる答え出し、課長さん達に現況証明書の許可を受けることが出来る難局を乗り越えたことがあり、それを思い出しましたので見つめることにしました。するとこの近くに住んでいた高校時代の同級生の言葉を思い出しました。彼の話では、海岸近くにあった大岩がもっと岸の近く有ったように感じたけど、あんなに遠かったかなと言っていたのを思い出したのです。まさか海岸線が削られて、堤防近くのこの県道が、山の方に押されて私有地の上を走るようになったのではないかと思うようになりました。申請地の山の手側に2メートル幅の細い町道があるのに気がつきました。依頼者の夫婦に聞いたところ、私たちが小学生の頃その道を通って小学校に通ったと言いました。この細い道は昔から変わらずここにあったのだと思い、弟に「この道から建物配置図を作ってみてくれ」と言いました。すると弟が「入った入った」と言いだしました。私も弟に「建物登記が出来るな」と言ったところ、「出来る」と言いましたので、依頼者の夫婦に「建物登記が出来ますよ、良かったですね」と満面の笑顔で言いました。


 追記 平成25年5月4日(土)
 最初、依頼人の夫婦は所有地全部の相続登記をした田原町の先生に建物登記を直接依頼に行きました。その後、建物登記が出来ないことを知ったリフォームの会社が、Y氏に相談して、私の事務所に持ちこんできました。又、この宅地には古くからの不必要な登記(親戚の登記)がありましたので、ついでに相続登記をし、抹消登記を致しました。
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