昭和50年代の話です。この方の娘さんが、仕事で渥美の登記所に来ていました。それでその娘さんのお父さんだということで、私も親しみを込めて対応しました。その娘さんが結婚した後の話です。かなり、調べたのですが、多分こうだったと思います。おじいさんの農地を宅地転用した土地だったと思います。その宅地を贈与しておく必要がありました。この宅地1筆だけでしたからね、残しておくと相続などで面倒だったからです。ここまでは普通に話が出来ました。問題はその次の段階でした。このまま1回で相続すれば当然ですが贈与税が出ます。そこで何回にも分けて贈与させて下さいと言いました。ところが、お父さんは軽い言い方で「いいわ」と言うのですよ。いいわという言葉はやらなくてもいいわですよね。どうみても、そのようにしか聞こえませんでした。それで何回でもやらせてほしいと私は言いました。するとやっぱり軽い言い方で「いいわ」と言うんです。こんなやりとりを何回でもやりました。そして最後に私はブチ切れました。「いいか、よく聞け、あんたの娘さんをよく知っているから、私も娘さんに怒られないようないい仕事をやってやろうとしてるんだ。贈与税が出ても、私は一切責任は取らんぞそれでもいいんだな」と半分怒鳴りながら言いました。すると今度も軽い言い方で「いいわ」と言うんです。私もこれには笑うしかありませんでした。何回にも分ければ私も報酬になりますので、分けて贈与申請を出したかったですが、どうやらどぶに捨てたいようでしたので、「それなら税金が出たなら又来てください、その時また考えましょう」と言いました。そして翌年の3月の申告の時、贈与税が出たと言って来ました。「よしそれじゃあ抹消しましょう」と言ったのです。すると軽い言い方で「いいわ」と言うんです。私はいつもの軽い言い方で言いましたので、それ以後、バカバカしくて一言も話しませんでした。贈与税を払うつもりならなんで事務所に来るんですかね。事務所に来なければいいではないですか。この方が事務所に来たのが全く分かりませんでした。
 それから3カ月過ぎたころ、結婚して嫁いでいた娘さんが旦那さんと一緒にやってきました。
「お父さんがね、川崎はだめだなー、だめだなーとみんなに言ってたよ」と言いました。
 私も軽く次のように言いました。「贈与税が出るから何回にも分けましょうと言ったんだけどね、お父さんは全然聞かなかったんだ。だからしょうがないよ」とね。
 このお父さんは私に一体どうして欲しかったのでしょうかね。全く分かりません。


 このお父さんはとても耳の大きな人でした。いわゆる長命、長生きの相ですよね。2か月前、女優の綾瀬はるかさんと高倉健さんがテレビで話をしているのを見ました。綾瀬はるかさんがこう言いました。「健さんは耳が大きいですね。耳の大きな人は人の話をよく聞くと言うじゃないですか?」すると高倉健が言いました。「いえ、ぼくは人の話は聞きません」と、このようなやり取りの話をテレビで見ていまして、あの耳の大きなお父さんを思い出しました。
 

 私もこれ以後は、贈与税は最後まで出さないように何が何でも本人の話など聞かずに贈与登記をするようになりました。今はどぶはきれいです. にほんブログ村 地域生活(街) 中部ブログ 田原情報へ
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