5,6年前頃の話です。Kさんがおじいさんを連れて事務所に来ました。Kさんは4ヶ月前に建物登記をしたばかりですので、その関係で来てくれたと思います。40年前に、ふたりが交換した土地を登記せずにいたので移転登記をしたいとゆう話です。面積はどちらも1,500㎡程の土地でした。「これは登記料も含めて色々合算すると110万円はかかりますね。でも大丈夫です私は10万円でやります」と私もニコニコしながらKさんが折角来てくれたものですからうれしさのあまりついつい言いました。するとどうでしょう一緒についてきたおじいさんがやおら私を指さしながら、「あんた、責任とれるか?」と強い口調で言い出しました。私はすぐ分かりました。このおじいさんは最初から私の事務所に来たくはなかったのだと思いました。すぐに出て行く可能性がありました。でもここでひるむわけにはいきません。せっかくKさんが事務所に来てくださったのですからと思いながら「大丈夫です、責任は取りませんが、私のゆうとおりにすれば10万円で出来ますから」と言いました。私もこんなペラペラ話すおじいさんのために責任を取りますとはとても言えませんでした。結局説得することは出来ませんでした。二人とも出て行きました。それから半年ぐらいたった次の年の3月頃Kさんがやってきました。登記料も含めて110万円かかったそうです。おじいさんの好きな先生は交換の登記相談をした最初から110万円はかかると言ったそうです。それでもその先生のところで登記をしたそうです。なぜ戻ってこなかったのか、なぜ安い川崎で登記をして下さいとその先生は言わなかったのか、Kさんは私に申し訳なかったと言いました。おじいさんもこんなことなら川崎でやれば良かったと言ったそうです。そう言い終えると、私に1万円を置いて出て行きました。Kさんの後ろ姿を見ながら、私は「Kさん、私は田原市で一番人気がない司法書士でごめんなさい。」と言いました。Kさんはその後引越しをしました。あの100万円があれば引越しをしなくてもよかったかもしれません。残念です。

( この話はもちろん本当にあった話です。長い間仕事をすれば色々な登記テクニックをおぼえます。おじいさんの好きなその先生はそれを使わなかっただけです。土地の地目も書いていませんし、詳細に書いていません。話がはっきりしない方は上記文面の中の「次の年の3月頃」に注目して推理してください )

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