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補助者の山口です。

引きなおし計算時に遅延損害金の利率での計算を主張する業者に対して
「ボトルキープ論」という反論の方法があるので紹介します。

■ボトルキープ論

支払日に元本も利息も一切払わなかったとしても
その支払日までに支払うべき元利金(制限金利)の総額以上に、
既に違法な約定利率で支払ったいた場合は、遅延は生じないとするもの。

制限利息を超えて支払った分は、キープボトルのように相手方の手元にあるのだから
支払ができなかったとしても、『留保』された金銭から返済したものと考えられる。
キープボトルからお酒を飲んでも支払う必要はないことからこの名前がつきました。

正直、自分の説明、及びボトルキープの比喩がわかりやすいか自身がないので、
ストレートに裁判で使われた表現(原告主張)を引用しましょう。

『期限の利益喪失特約については,厳格に制限し,その弁済期日だけを捉えて,約定の弁済額を怠ったら直ちに特約を適用し,期限の利益を喪失すると解すべきではなく,一連の弁済の中で,約定の元本と利息制限法の制限利率の額で計算し,その期日までに履行がなされていれば特約が適用されないと解すべきである(いわゆる「ボトルキー論」)。

・・・中略・・・

平成13年9月5日時点で原告が被告に支払うべき元本額は,8万9834円であり,・・・略・・・,利息制限法制限利率により支払うべき利息は,25万6479円であり,総額34万6313円となる。一方,原告が平成13年8月6日までに弁済した総額は,49万8630円となる。そうすると,原告は,平成13年9月5日までに法律上支払うべき金額を支払っているため,期限の利益喪失特約は適用されない。』
松山地裁西条支部平成19年3月9日の原告主張

主張そのままのほうが下手な比喩よりわかりやすいかもしれません。

問題としてはボトルキープの比喩のように、
『支払が元本に充当されず留保されているから
支払いが滞ったとしてもその留保された金銭で相殺される』と言ってしまうと、
制限利息を超えた支払は元本に充当されるといった判断と矛盾してしまうことです。

ボトルキープ論を否定した判例を見てみましょう。

『制限利率を超過する利息の弁済は,民法491条により当然に残存元本に充当されるものであり(最高裁昭和39年帥第1151号昭和39年11月18日大法廷判決・民集18巻9号1868貢参照),元本に充当されることなく来るべき後の弁済期日のために控訴人に留保されるものではない。』
高松高裁平成19年11月29日判決 ※信義則で期限の利益喪失を否定

確かに理屈は通ってます。
留保されるとするならば、
いくら留保されるのか、その部分は元本充当されないのか
いろいろ問題がでています。

それを踏まえて肯定した判例を見てみましょう。

『控訴人は,別紙計算書のとおり,平成13年1月29日の時点で元利金を含めて合計31万3931円を支払っているところ,別紙償還表2によれば,平成13年2月27日の時点で控訴人が支払うべき元利金の合計額は29万8989円であるから,控訴人は,平成13年2月27日以前の時点で,同日に支払うべき元利金を既に支払っていることになる。したがって,控訴人が別紙償還表1で定められた平成13年2月27日の支払を遅滞したからといって,期限の利益を喪失したことにはならない。』
神戸地裁平成17年8月25日


『仮に当該支払期日において,約定の元本及び利息の制限額の支払いが全くなかった場合においても,同支払期日までに支払った約定の元本及び制限超過部分の利息を利息制限法所定の利率において充当計算し,同支払期日までの約定の元本及び利息の制限額を既に支払っているのであれば,期限の利益は喪失しないと解すべきである。〕前記のような場合でも,本来同支払期日までに法律上支払義務を負う額が支払われている以上,同期日に何らの支払がないからといって,期限の利益喪失特約を適用し,期限の利益を喪失させることは,同期日において,結果として制限超過部分の利息の支払を強制することになり,利息制限法1条1項の趣旨に反することに変わりはないからである
松山地裁西条支部平成19年3月9日

これらの裁判では「留保」したかどうかはあまり問題にしてないわけです。
元本充当したからといって、さらなる支払を強制させたら、
実質的に一時的にせよ利息制限法以上の支払をさせることになってしまいます。
だから 期限の利益は喪失しないと判断したようです。

ボトルキープ論を否定した判例は『留保』という考えを否定していますが、
結論としては信義則で期限の利益の喪失を認めていません。
肯定した判例も『留保』には触れていません。
『留保』に関しては触れずに上記判例の太字部分を強調すれば
かなりの確率で認められるんじゃないかと個人的は思います。


 補助者山口
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