補助者の山口です。こんにちは。

今回も判例の紹介です。

判例の結論は

「 期限の利益喪失特約の下での利息制限法所定の制限を超える利息の支払の任意性を否定した最高裁判所の判決以前に貸金業者が同特約の下で制限超過部分を受領したことのみを理由に,当該貸金業者を民法704条の「悪意の受益者」と推定することはできない」

というもの。

一部の消費者金融に有利な判決と言えますが
関係ない消費者金融までこれを持ち出してくるので困ってしまいます。

なぜ この判決が一部の消費者金融にしか効果がないか

★長くなるので簡単に書くと

期限の利益喪失約款→みなし弁済否定→悪意推定の流れは
(平成18年以前は)例外的に不可ってのが今回の結論です。

しかし、原則的には みなし弁済否定→悪意推定で、
期限の利益喪失約款以外の理由でみなし弁済が否定されれば原則悪意が推定されます。

よって悪意の推定を覆すには
期限の利益喪失約款がなければみなし弁済が成立することを立証する必要があるはずです。

となると、エイワやシティズなどの一部の貸金業者以外は
その約款以外の理由でもみなし弁済が認められないので、
今回の判決は関係ないのです。

 補助者山口
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★長い説明

グレーゾーンの基礎知識から


みなし弁済が認められれば20%を超えた貸し付けも有効です。

ただし、みなし弁済が認められるには条件がありました。

1 貸金業者であること。
2 17号書面をわたすこと(契約時に細かい情報まで相手に知らせる)
3 18号書面をわたすこと(弁済時に細かい情報まで相手に知らせる)
4 金利を金利と認識して支払ったこと
5 任意に支払ったこと

現在みなし弁済はほぼ否定されますが、その理由は
5の任意性が認められないからです。
(2と3の書面の提供もほとんどの業者では認められません)

ほとんどの場合、契約書には期限の利益喪失約款が入っています。
「支払が●度遅れたらのこりの借金を全部一括で支払え」って特約です。
この特約があるのに、「法律の制限を超えた利息は支払いません」とは言いにくいでしょう。
最高裁も「この特約の存在は,通常,債務者に対し,支払期日に約定の元本と共に制限超過部分を含む約定利息を支払わない限り,期限の利益を喪失し,残元本全額を直ちに一括して支払い,これに対する遅延損害金を支払うべき義務を負うことになるとの誤解を与え,その結果,このような不利益を回避するために,制限超過部分を支払うことを債務者に事実上強制することになるものというべきである。」として
期限の利益喪失約款がある場合にしはらいの任意性を否定しました。

期限の利益喪失約款=みなし弁済不可 となったわけです。
最判平成18年1月13日

さて、みなし弁済は認めらえなくなりましたが、
貸金業者が善意受益者なのか争いがありました。

貸金業者は「法律の要件を満たしているとおもっていたから善意だ」と主張します。

それにたいして最高裁は平成19年7月13日の判決
「貸金業者が利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領したが,その受領につき貸金業の規制等に関する法律43条1項の適用が認められない場合には,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り,民法704条の「悪意の受益者」であると推定される。」と判断しました。

貸金業者はみなし弁済が認められない場合、特段の事情がなければ悪意推定されます。
貸金業者なんだから法律は当然知っているべきだってことですね。

しかし 今回の判例で、

貸金業者だから法律は当然知っているべきだけど、
期限の利益喪失約款だけで任意性が無くなるとこはわからなくても仕方ないから、
期限の利益喪失約款で任意性を否定した判決までは、
期限の利益喪失約款の存在だけを理由に悪意の推定をすることできない。としました。

逆にいえば、他の条件をそろえていない場合は悪意が推定されるってことです。

そして、ほとんどの貸金業者は他の条件をそろえていません。

だから、ほとんどの貸金業者には今回の判断は無関係なんです。
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