アクセスありがとうございます。

補助者の山口です。

大きなニュースなので知ったいらっしゃる方も思いますが,
政教分離原則違反で違憲判断がされました。

公有地に神社は「違憲」 北海道砂川市の政教分離訴訟、最高裁大法廷
北海道砂川市が市有地を「空知太(そらちぶと)神社」に無償で使用させていることが、憲法の定める政教分離原則に違反するかどうかが争点になった訴訟の上告審判決が20日、最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允長官)であり、大法廷は違憲とする憲法判断を示した。
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引用元:iza


裁判所がまとまる裁判の要旨はシンプルなものです。

財産管理を怠る事実の違法確認請求事件
市が連合町内会に対し市有地を無償で神社施設の敷地としての利用に供している行為が憲法89条,20条1項後段に違反するとされた事例



単純化して考えれば、最高裁の判断は多くの人が納得すると思いますが、
個別の事件として考えると一般的な感覚では議論の余地がある問題とも思えます。

そこで違憲判断に対しての反対意見を転載します。
 補助者山口
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裁判官甲斐中辰夫,同中川了滋,同古田佑紀,同竹内行夫の意見は,次のとおりである。

私たちは,多数意見と結論を同じくするが,多数意見のうち第2の2(本件利用提供行為の憲法適合性)については賛成することができず,本件利用提供行為の憲法適合性を判断するための事情について更に審理を尽くさせる必要があると考えるものである。

1 多数意見は,第2の1憲法判断の枠組みにおいて,国家と宗教のかかわり合いについて一般的判断を示した上で,国公有地の宗教的施設に対する無償による利用提供行為が相当とされる限度を超えて憲法89条に違反するか否かの判断に当たって,「当該宗教的施設の性格,当該土地が無償で当該施設の敷地としての用に供されるに至った経緯,当該無償提供の態様,これらに対する一般人の評価等,諸般の事情を考慮し,社会通念に照らして総合的に判断すべきものと解するのが相当である。」との具体的な判断基準を示している。

多数意見のこのような考え方については,私たちも基本的に賛成する。

ただし,本件の憲法適合性を検討するに当たり,以下の点を指摘しておきたい。

多数意見も自ら述べるとおり,本件利用提供行為の憲法89条適合性を具体的に判断するに当たっては,「諸般の事情を考慮し,社会通念に照らして総合的に判断すべきもの」である。特に,本件のように明治以来,地域社会と密接な関係を持って,存続し引き継がれてきた宗教的施設については,過去の沿革・経緯,宗教的施設の性格,土地利用の具体的態様,運営主体の性格,地域住民の認識や一般人の評価などを,外形のみならず実態に即して,文字どおり総合的に判断する必要がある。この点で,原判決は,本件神社物件やそこでの行事が宗教性を有するとする部分については,具体的かつ詳細な事実を認定しているが,過去の経緯,土地利用の具体的態様,運営主体の性格,地域住民の認識や一般人の評価などについては,部分的又は抽象的な認定にとどまっている。多数意見も原判決のような一面的な確定事実を基礎として,本件利用提供行為が違憲であるとの判断をしているが,結果として本来の意味での総合的判断がされていないきらいがある。

本件利用提供行為の憲法89条適合性を正しく判断するには,何よりも判断に必要な諸般の事情を全体的に認定した上で,総合的に判断することが必要である。

2 そこで,多数意見が依拠し原判決が認定した憲法判断に必要な諸般の事情について,審理を尽くして過不足なく全体的に認定しているかを順次検討する。

(1) 本件利用提供行為のうち最も重要なのは,本件祠が設置されている地域の集会場等であるS会館(本件建物)に対する本件土地1,2の敷地としての無償提供行為である。
本件祠が,その他の神社物件と共に宗教的性格を有することは否定できないが,本件建物に対する市有地の利用提供行為の憲法適合性を判断するのであれば,本件建物全体の利用実態や構造などを明らかにした上で判断すべきである。本件建物は,もともと地域コミュニティーの融和を図るために新築されたものであって,実際にも地域住民の親睦活動に利用されていることは明らかであるが,さらに,上告人は,本件建物は町内会館であって,本件建物内部の構造は,集会場等地域のコミュニティーセンターとしての利用に供するように造られていて,本件祠が設置されている部分は,そのごく一部であり(本件建物の概略図によれば,その建築面積の20分の1程度),日常的には,その扉は閉ざされたままで,参拝する者は皆無であることや,本件建物の利用状況も,その大半は英語などの学習教室や,老人クラブなどの町内会の親睦等に利用され,年間利用実績355回のうち神社の行事として利用されているのは,2%足らずの7回程度にすぎないことを主張立証している。このような本件建物の構造や利用状況を踏まえると,本件建物に対する市有地の利用提供の意味も,単なる宗教的施設に利用提供する場合とはおのずから異なってくるのであって,それが特定の宗教に対する特別の便宜の提供や援助に当たるか否かについての判断や一般人の評価にも影響を与えることは明らかである。

一般に,地方の公民館などはその沿革からその一部に宗教的物件が置かれていることもまれではないが,仮にそのような公民館等に公有地を無償貸与したとしても,公民館等の構造や利用状況が全体として公民館等として構築され利用されているのであれば,これを取り立てて特定の宗教に対する特別の便宜の供与や援助に当たるとまでは,当事者はもとより一般人も考えないとみるのが常識的な見方であろう。

原判決は,本件建物の利用状況や構造などについて,そのごく一部である本件祠や神社としての利用については,具体的かつ詳細な事実認定をしているが,建物全体の利用状況等については,上告人の主張にかかわらず具体的な認定をしようとしておらず,総合的な判断をするための審理が尽くされていない。

(2) 原判決及び多数意見は,本件神社物件の敷地である本件土地1,3及び4が地元住民からの寄附により町有地となったという経緯は認定しているが,寄附受入れ当時神社物件が存在した本件土地1及び4は,地元住民である所有者Dが「固定資産税の負担を解消するため」寄附願出をし,町は神社施設のために無償で使用させることとし,寄附を受け入れたとしている。

しかしながら,本件土地1及び4は,もともと小学校を増築するために当時神社施設のあった隣地が町において必要となり,Dがその所有する土地を移転用地として提供したものである。さらに,上告人の主張によれば,本件土地1及び4を町に寄附する際,Dは同時に学校用地として1229㎡の土地を寄附しているのであり,これらを併せ考えると,本件土地1及び4の寄附はそれのみを切り離して評価することは相当でなく,町としては,私財をなげうって町の公教育の充実に協力した町民との間の良好な関係を維持する必要があり,かつ町にとってもこれらの土地の寄附受入れは,将来にわたって大きな利益をもたらすものであった(原判決等は認定していないが,現にDの寄附した土地は小学校用地として利用され,本件土地4は,その後開拓を記念する市有施設の敷地として利用されていることがうかがわれる。)からこそ寄附を受け入れたと見るべきであろう。

このような寄附受入れの経緯や寄附された土地の利用状況は,寄附を受けた土地の一部を既存の神社施設へ引き続き使用を認めたことが特定宗教に対する特別の便宜供与等に該当するかや,それを一般人がどう評価するかを判断する上で重要な事実であり,これを全体的に認定しなければ,総合的な判断はできない。原判決はこの点においても審理を尽くしていない。

(3) 次に,本件神社の運営についてみると,多数意見も,S神社には神職はおらず,付近住民らで構成される氏子集団により管理運営されているものの氏子の範囲も明確でなく,規約等も存在せず,祭事は年3回行われているにすぎないことは,認めているところである。さらに,上告人は,氏子総代世話役等の神社運営に携わっている者の中で神道を信仰しているものは皆無であるし,これらの者は,町内会に役員として参加するのと同様な世俗的意味で氏子集団に参加し,先祖から慣習的に引き継がれている行事に関与しているにすぎず,そこに宗教的意義,宗教的目的を見いだしている者はいないと主張する。本件神社の氏子集団の性格や活動がこのようなものであるとすれば,そのことは,本件神社施設の宗教性を判断するに当たって考慮すべきことであると考えられるところ,この点についても原判決が十分な審理を尽くしたとはいえない

(4) 原判決及び多数意見は,本件利用提供行為が,一般人の目から見て,市が特定の宗教に対して特別の便益を提供し,これを援助していると評価されてもやむを得ないとし,これを違憲判断の理由としている。

しかし,本件のように北海道の農村地帯に存在し,専ら地元住民が自らの手で維持,管理してきたもので,地元住民以外に知る人が少ない宗教的施設に対する公有地の利用提供行為についての一般人の評価を検討するのであれば,まず,当該宗教施設が存在する地元住民の一般的な評価を検討しなければならないところ,これを検討した形跡はない

本件証拠によっても,被上告人らによる本件監査請求以前に,住民らが本件利用提供行為の憲法適合性について問題提起したり,市議会において採り上げられたという事情はうかがわれず,かえって被上告人らを除く地元住民においては,本件神社が,開拓者である先祖の思いを伝承するものであることを超えて,神道を具現,普及するようなものとは受け止めておらず,本件利用提供行為に特段憲法上の問題はないとの理解が一般的ではないかと思われる。このような点についての検討をしないで,一般人の評価を抽象的に観念して憲法判断の理由とすることは,審理不尽といわざるを得ない。

3 以上のとおり,原審は,憲法判断に必要な諸般の事情について審理を尽くしておらず,2で指摘した点について正しく認定判断がされたとすれば,多数意見の判断とは異なり,本件利用提供行為を合憲と判断することもあり得たものと考える。

したがって,原判決を破棄し,本件利用提供行為の憲法適合性を判断するための事情について更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すべきものと考える。
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強調は私がやりました。
この反対意見、少々感情的とも思えますが読み物としては興味深いと思います。
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