一年前、債務整理が全て終了した依頼者がいる。

最後に残された業者との間で長期分割返済の和解が調い、順調に返済が進んでいるはずだった。

ところが。

そのお父上から電話をいただいた。

お父上は、依頼者の債務の連帯保証人である。

嫌な予感というものは往々にして的中する。

そうでなければいいなと願う一縷の期待に反して。

債務整理のリピーターはお断りしているのだが、お父上のことを考えれば無下に断るわけにもいかない。

お二人でお越しいただくことを条件に、お話を伺うことにした。



お二人の間にはコミュニケーション不足があるのか、まさに波乱含みだった。

一緒にお越しいただくはずが出発前に口論となり、別々の車で到着。

さらには事務所の玄関先でも小競り合いを起こしていた。

これだけでも只事ではない。

とりあえず、ということで中に入っていただいた。

内容は、こう言うのもなんだが、単純明快な話である。

和解した業者への支払を怠ったため、訴訟を提起された。

ついては、その対応を依頼したいとの内容だ。

一も二もなくお引き受けするのは簡単なこと。

ただ、どうしても引っかかることがあった。

なぜ同じ過ちを繰り返すこととなってしまったのか。

自身の何がいけなかったのか。

同じ過ちを繰り返さないようにするには今後どのように生活を改めるべきなのか。

以上の点を依頼者本人が自覚しない限り、根本的な解決たり得ない。

必要なのは訴訟対応という対症療法ではなく、本人の持つ病巣自体にメスを入れることだ。

お父上の年齢を考えても、これが最後のチャンスになるだろう。

そう考え、相談に臨んだ。



話を進めるうち、本人のお金の使い方に問題があることが判明する。

その部分を削減すれば返済原資を捻出することは容易だと、私もお父上も考えた。

ここまでに事態が進展している以上は、本人が危機感を持ち腹を括ってもらわなければならない。

自身の不始末は、自身が痛い思いをしてでも取ってもらう必要がある。

だが、その「決意」が待てども待てども本人の口からは一向に出て来ない。

本当に自分の問題として捉えているのか疑わしい。

私よりも年齢が上の本人。

将来の生活を少しでも考えているのか。

ご両親にもしものことがあった場合、どうするのか。

他人事としてではなく、私自身の両親に対する思いも込めて、時に感情を表出しながらも話をした。

時間にして四時間以上。

いかに長時間話をしようとも、こちらの言わんとするところが伝わったのであればその労苦も疲労も厭わない。

結果は物別れ、というよりもベクトルが異なる方向を向いていることを感じただけだった。



お父上には気を利かしていただき、本人と二人だけで話をする。

しかし、私の要望事項について様々な理由を並べては難色を示す。

私が最後まで言葉を継がないうちに「でも」、「ただ」と言葉を差し挟む。

そうしたやり取りは無意味であるだけでなく、徒労感だけが残る。

そこまでに私が長時間にわたって話をした意味はあったのか。

現状を何とかしたいという気持ちが真にあるのか。

本人のためを思い厳しいことも言い渡したが、どうやら何も伝わっていなかったらしい。

「この場が何とか収まるまで黙っていよう」

そんな気持ちが明らかに態度に出ていた。

本人が心を入れ替えない以上、私が関与しても仕方がない。

60回の分割返済の初回を支払ったのみで、債権者に対しても申し訳が立たないくらいだ。

いくらお父上にひれ伏されたとしても、本人に真摯な行動が伴わないのであれば如何ともし難い。



「私の言うことがお分かりにならない以上は」、と切り出す。

これ以上本人を前に話をしても、時間の浪費に他ならない。

とうとう、タイトルの言葉を続けた。

「帰ってください」。

記憶を辿ってみても、恐らく私からこの言葉を投げたのは初めてのことだと思う。

その一言を聞いても、なぜか腰を上げようとしない本人。

ここに至って私に何を期待するのか・・・

自身の行動の非を認められず、さりとて自身を改めるという考えもないらしい。

金さえ払えば黙って後始末をしてくれる人間が必要ならば、他をあたってくれ。

ここまで煮え切らず、前進を躊躇う人間のために力を尽くすなど到底考えられないこと。

怒気を含んだ口調で繰り返した。

「帰ってください。私があなたのためにできることはありません」、と。



私は、本気を見せてほしかっただけだ。

そして、本人の心から出る言葉を聞きたかった。

それさえあれば、多少の困難が予想されようとも受任しただろう。

最後まで本人の決意を聞けなかったのは残念でならない。

真剣に本人の将来を考えるからこそ、言いたくないことでも時として言う。

奮起を促さんがために、強い口調にもなる。

それでも一歩を踏み出せないのであれば、何も変わらない。

債務整理に真摯に取り組まれている先生方も、きっと同じだと思う。

このままでは本人のためにも、本人を心配されるお父上のためにもならない。

だからこそ、心を鬼にして突き放す。

その気持ちが分かるだろうか。

赤の他人がそこまで言うだろうか。

指摘してくれるだけ幸せと感じてもらえないのだろうか。

小事にうつつを抜かすばかりに大事を置き去りにしては人生を棒に振りかねない。

ご自宅に帰ってからでもいい。

現実から逃避しているだけの自分に気付いてもらいたい。

そして、今一度自身のかけがえのない人生に向き合ってもらいたい。

モヤモヤとした思いと共に、針の先ほどの願いを心に抱いた。

どうか目を覚ましてくれますように、と。



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同じ日、別の依頼者からお心付けをいただく。

お隣さんからも新鮮なお野菜が。

落胆させられるのが人ならば、お力を分け与えていただけるのも人である。

大波小波、潮の干満もある。

図らずも前日に書いた記事のように。

それでも進んでいこうじゃないか。

進んでいくしかないのだから。







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