前回の信託登記から数年後、いまだ信託不動産の売却ができたという連絡もなく、その物件の近くを通ったときに「そういえば、あの信託の案件どうなったかな?今後売却をする前提で組んだ信託だから、売買する際の登記はイメージが沸くけど、Aさんがもし亡くなったりすればどうなるんだろう?」とか漠然と考えていたその矢先に、Bさんから「Aさんが亡くなった」という連絡が入りました。
残念ながら信託不動産の売れる前だったそうです。

まだ、葬儀が終わったばかりで遠方に居住している方も含め親族(相続人)みんな揃っているということなので、とりあえず遠方の方がお帰りになる前に間を明かずに事務所においでいただきました。
今回の信託契約を確認すると、目的はあくまでAさんの生活や福祉確保だったので受益者のAさんの死亡を終了事由に入れており、相続の対応についてはAさんの相続人はBさんを含むご兄姉2人で仲も良好で協議も容易なので信託契約時点で考える必要はないと言うことでしたので、残余財産の帰属は法定相続人とすると定めておりました。

相続人のお二方とご相談した結果、遺産分割協議と言って良いと思いますが、信託物件については受託者でもあるBさんに相続させたいという結論となりました。
この話をベースに作業を進めることになったのですが、やはりまだまだ取り扱いの少ない事例ですし、司法書士というものは言葉尻一つ一つを気にする仕事ですので、登記申請内容を決めたり書類を作るに当たって、本当に様々な疑問にぶつかりました。

たとえば、Aさんの死亡により信託は終了したわけですので、信託財産ではなくBさんの固有財産になったことを登記する必要があります。
信託登記の抹消はともかく、そもそもBさんの所有権名義があるので「受託者の固有財産になった旨」と登記をすべきなのか。しかしBさんは受託者ではなく法定相続人として残余財産の帰属の権利を持ち引継を受けたから所有権を取得したのでやはり「所有権移転」登記なのかとかですね。
また、登記とは別に、「残余財産の帰属」とか「引継」とかの概念を考えたときに、そもそもこれは信託行為(契約)でたまたま帰属権利者が法定相続人と指定されているのであって、税務上はともかくとして、そもそも相続手続では無いのじゃないか、そうなると遺産分割協議の対象ではないので1人に帰属を決められないのではないかとかですね。(これらの疑問の結論は、諸事情により申し訳ありませんがブログでは割愛させていただきます)

いろいろ調べたり、調べた結果で自分なりの解釈や理論構成を考えて、その結果を持って法務局に照会を提出した結果、私の考えた処理で良いという回答をいただき、その後相続人のみなさんの全面的なご協力もあり、なんとかこの件は登記完了までこぎつけることができました。

今回の件でひとつ思ったのは、たしかに「信託をする」ことに関しては、事件少ない割に推進したい方もたくさんいるのでしょう、いろいろ本やネットで様々な情報がありました。
しかし、「信託を終わらせる」ことに関しては本当に情報が少ないと感じました。
たしかにないわけじゃありません。あるにはあります。
しかし、本であれば、巻末の方にほんの少しだったり、原則論は書いていても少しでもイレギュラーなことには対応できる内容では無かったり、ネットでは見つけることができてそこに結論があっても、それを自信を持って法務局などにぶつけられるような根拠に乏しかったりと、実務に耐えるような情報は本当に少なかったです。

残念ながら今回、信託不動産売却前のAさんの死亡という結果で、わざわざ信託まで活用した目的は果たすことができませんでしたが、こんな結果にもかかわらずBさん夫婦からは、「とても良いものだと思う。逆になぜ事例が少ないのかわからない。有松さんがこれから地元で広めてください。」みたいな、ありがたいようなプレッシャーなような激励をいただきました。

でも今回の件で、民事信託が単なる「良いもの良いもの」というだけではなく、自由度が高い故の問題点や難しい点をある程度見ることができましたし、また少し手元の信託の本や資料が増えました。
私としては、メリットばかりではなく、デメリットやリスクもある程度理解できて相談者さんにちゃんと説明できるようにならないと携わる気にはならなかったのですが、今回の件で、来年は積極的に勉強して活用できるものなら活用したいという気持ちに今はなっています。
そういう意味では、研鑽や勉強だけじゃなく経験もなくては成り立たないし、我々もやはりお客様に育てられていると感じた事件でした。

最後になりますが、今年のブログはこれで終わりになると思います。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。

皆様、どうぞ良いお年を。


※今回の投稿は当職の取り扱った実際の事件について触れておりますが、依頼者様から個人情報や個人を特定するような記載をしない前提で投稿の許可をいただきました。

 

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