以上が、私が体験した範囲での「遺言を作っておけばこんなことにならなかったのに。」と感じた事例です。

他にも、相続人が誰になるかはハッキリ把握できているが、どう考えても、この連中では遺産分割協議が整わないだろうなとご本人か感じていらっしゃるなら遺言を作った方が良いとかあるのですが、最低限のポイントは、自分(と、自分の亡くなった後さらに配偶者が亡くなった際の)の相続人が正確に把握できていて、その相続人間でちゃんと連絡が取り合える間柄(人間関係ができているか)であるかどうかだと思います。

もし、そこにわずかでも不安があるのであれば絶対に遺言は作成すべきだと思います。

 

最後に、遺言には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言、各種危急時遺言など、色々ありますが、典型的なのは自筆証書遺言と、公正証書遺言です。

その中で司法書士が9割以上の事件で勧めるのが公正証書遺言です。

そう言うと、またお客さんから「大した財産でもないのに、わざわざ公正証書でしなくても・・・」と言われるのですが、私の感覚では大した財産でないから、公正証書がおすすめなんです。

資産家の方の遺言は、正直言って財産の内容も複雑で、単純に一人の方に全部を相続させるなんてことはおそらくありません。余計な紛争が起こらない様にと考えれば、振り分けも相当な知恵を絞って考える必要があります。そして、こういう事案の公正証書遺言の作成費用は結構ビックリするような金額になります。

また、そういう方は財産を運用していることもありえますから、金融機関の投資信託くらいなら商品は固定してますからまだしも、現物の資産運用などをしていれば、去年の財産と今年の財産は全然内容が変わっているなんてことも当然にあり得ることだと思います。

こういう方は、内容が変わる度に莫大な費用掛けて公正証書遺言作るわけにはいかないので、自筆証書遺言で作って毎年書き換えるしか仕方のないことだと思います。

これに比べて、いわゆる庶民の方で、ご本人曰く「大したことない財産」しか持っていない方の場合は、公証役場に証人2人連れて行くという手間はありますが、ほとんどの場合一生に一度しか作りませんし、作成費用も、「これで先の心配事が一つはなくなる料金」としては納得できる額だと思います。

それと、例えば本屋で薄い本を買ってきた程度の付け焼き刃の知識で、自筆証書遺言を作るのは絶対におすすめしません。

自筆証書遺言の要件は、全文自筆・日付・署名・押印です。これを満たさないと遺言全文無効になります。言葉で書けば簡単ですが、今の時代、全文を自分の手で書くのは、司法書士の私でも自信がありません。誤字脱字の訂正方法も厳格ですし、要件に合致してても内容が不完全であれば、手続に乗せられないこともあります。

また、公正証書遺言のように公文書ではないので、自分が書いた”ただ1通”しかこの世に存在しませんので、紛失や焼失の危険もあります。

そして、一番の問題は、自筆証書遺言はご本人が亡くなって効力が発生したら、家庭裁判所へ「検認」という手続を経る必要があることです。

検認は「この紙が、本人の書いた遺言である、と裁判所で確認する手続」と思っていただければ良いと思いますが、これは戸籍を調査して相続人全員を特定して、家庭裁判所が呼び出しをかけ、集まった相続人に確認してもらうという手順で行うらしい(その場に立ち合ったことはないので「らしい」としておきます。)ですが、読んでわかるとおり、検認だけで遺言のないちょっとした大規模な相続手続を行うくらい手間が掛かりますし、法律上は封をしてある自筆証書遺言を検認せずに開封すると過料に処せられるとあります。

そして、検認はあくまで「本人の書いた遺言だ」と確認しているだけで、裁判所が遺言として有効だとお墨付きを与えているわけでもありませんので、さらに前記の、要件や内容の不備で無効のなる可能性は残ります。ここまでして、無効になったら目も当てられませんよね。

公正証書遺言の場合は、そもそも公文書ですから検認の必要はありませんし、公証人の先生が全文書きますから、ご本人が明らかに実現できないような内容(たとえば、相続人以外の、どう考えても農地法の許可が受けられない人に農地を遺贈するとか)を書くことを公証人に強く依頼しない限りは、形式や内容で無効になることはありません。また、公文書として原本は公証役場で保管されますから、紛失や焼失したとしても、同じ内容の謄本が再発行できます。

この点を踏まえれば、自筆証書遺言で書くか、公正証書遺言で作るか、我々がどちらを勧めるかは明らかだと思います。

 

遺言の作り方については、今後、民法の改正等で法務局で遺言書を預かる制度なども検討されていると聞きますが、詳細はまだ我々の耳にも入っていません。

私の私見ですが、法務省の作る新しい制度は、登記のオンライン申請や法定相続情報証明制度の時も感じましたが、実際に数年運用してみて改善点を洗い出して、それからでないと、とても世間一般に活用できるものではないと思いますので、当面は是非公正証書遺言を活用していただきたいと思います。

 

また、時々相談者の方から「代わりに書いてくれ」なんて言われるのですが、司法書士は自筆証書遺言の代筆はできません。弁護士の先生も同様です。

公正証書遺言の場合は、証人にはなれますので、よくさせていただくのは、証人になると共に、相談者の方にどんな遺言を書きたいかをある程度聴取して、事前に公証人の先生に打診や打ち合わせをして、作成の本番にできるだけスムーズに遺言が完成するようにお手伝いはさせていただいております。

 

前にも書いたことの繰り返しにはなりますが、遺言で必ず相続のトラブル回避できるわけではありません。

しかし、遺言があることでトラブルが起こった事案よりも、遺言がないがために起こったトラブルの方が、数や重大性は圧倒的だとは思いますし、遺言には「付言」と言って、効力には影響はない部分ですが、残された親族に対するメッセージも書き加えることもできます(公正証書でも対応しています。)。こういうものを活用して、遺言があるがために起こるトラブルもさらに減らせることが期待できますので、私は書かないよりも書いた方が絶対に良いと思います。

是非、「死んだ後のことなんか知らん!」ではなく、残された人たちに「最後のことまで、ちゃんと道筋を作ってくれた素晴らしい父ちゃん(もちろん母ちゃんでも良いんですが)だった。」と言われる遺言を、お元気なうちに書いていただきたいと思います。

また、推定相続人の方々も、日頃からご本人と遺言の話を気軽にできる円満な家族関係を作っていただき、「何かあったら」と心配しないで良い時期に、「自分にくれ。」という遺言を作ってもらうかどうかは別として、「どんな内容でも好きに作って良いから、その手続がスムーズに進むように遺言を作っておいて欲しい。」というスタンスで(どんな遺言を書くかはご本人の自由ですから)、公正証書遺言をお勧めいただければと思います。

やはり、日頃の行いが大事ですね。普段、放蕩三昧で、いざ心配になったら「危ないから早く遺言を書いてくれ。」なんてのは、そりゃあ「虫がいい話」とか「縁起でもない」と言われるのは、あたりまえだと思います。

 

私の拙い私見な上に、相当な長編になってしまいましたが、最後までお読みいただき誠にありがとうございました。

 

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