昨日、司法書士&土地家屋調査士の業界誌『登記研究』が届きまして、いつもは、処理の直接の指針になる「質疑応答」だけサラッと読んで書棚行きなんですが、今回は「訓令・通達・回答」に気になるところがあって、ちょっとマジメに読みました。
相続登記における被相続人の同一性の証明に関することなんですが、長くなるので後日にしますが、なんか「あ、俺、今マジメに勉強してる!!」と意識しちゃいました。

本題ですが、5月29日から昨年から時々テレビでも取り上げられている「法定相続情報証明制度」が全国法務局でスタートしました。
私の地元の法務局でも、ポスター貼って、そのための受付も作って、準備万端といった感じです。
前述した通達もそうなんですが、ここ1、2年、相続登記の特に戸籍関係の今まで頭を悩ませていた部分について比較的簡易に処理できる通達がいくつが出ていましたが、今にして思えば、この制度を運用しやすくするための下ごしらえだったのかなとか思ったりしています。

具体的な手続の説明はこちらで→http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000014.html

この制度は、ザラッと説明すると必要な戸籍等の書類(結構いろいろいるんですが)を集めて、被相続人(亡くなった方)と相続人の名前等を書いた書面(「相続人一覧図」だったかな?)を作って、一緒に提出して申し出すれば(申し出と言ってももちろん書面です。)、法務局の方でその作った書面に証明文をつけてくれて、以後は戸籍の代わりに使える(ことを期待する)というものです。
テレビでも去年一度ローカルの番組ですけど「これは便利になりますね。相続の手続は大変ですからね~」みたいな話を見たことがあります。
で、数日前に、ある気心の知れた同業者とも話したんですが、「これで何が便利になるんだ!?全然わからん!」という意見で一致しちゃいました。

司法書士会でも色々研修やってますし、別に制度にケチつけるつもりはないんですが、こんなところが便利じゃないと感じるところです。

・まず、相続登記を上げれば、相続登記は相続登記で所定の書類を作って申請しなきゃならないわけで、それとは別に戸籍以外で証明取るために「代理権限証書だ。身分証の写しだ。相続人一覧図だ。」作る手間を増やす必要がどこにあるのか?ただ、これは慣れれば良い話かも知れませんが。

・この証明を取れば戸籍を集めるのが1回でよくなると言いますが、通常はそう何度も戸籍を集めませんよ。
相続登記では戸籍は個人情報の関係でお客さんに返すわけにはいかないような戸籍がある場合を除いて、ほぼ全ての事案で原本還付の手続を取りますし(法務局も戸籍の束はかさばるので嬉しくないみたいですし)、金融機関で被相続人の預金払い出す時も私も経験ありますが「戸籍はコピー取って原本返してくれ」と言えば返してくれます。
私の経験上で取り直しが必要なのは相続絡みの紛争で裁判所に提出する必要がある時に、杓子定規的に「発行後3ヶ月以内」と言ってくることがあるくらいでしょうか。
複雑な相続なら3ヶ月で全部の戸籍を集めきれないこともあるので、再度、一気に短期間で取り直しということも考えられなくもないですね。
ただ、この法定相続証明情報は、最近よく聞く同性間のパートナーシップ証明や、結婚相談所に提出する独身証明と同様の、一種の行政証明なので、これを裁判所が戸籍の束と同様に取り扱ってくれるかはまだわからないそうです。

・この法定相続情報証明は、我々が普段相続登記で作る相続関係説明図と比べて、記載内容に制限が多くて、しかも簡素すぎると思います。
まず、その相続関係図の様な家系図的な形式は取らず箇条書きでも良いそうです。
そして、被相続人の最後の住所がわからない場合を除き、本籍の記載は不可。
被相続人と相続人以外の名前は書けない。
法定相続分の記載も不可。
遺産分割協議の内容や相続放棄の内容は反映しない。
諸々あるようですが、箇条書きにしてですよ、法定相続分の記載ができなかったら、この証明だけでは法定相続分がわかりにくくなる可能性もあるのではと思います。
また、遺産分割協議はともかく、相続放棄の内容が反映できないとすると、第1順位の相続人(子)が全員相続放棄したら、法定相続人の順位自体が変わりますが、それはまったく証明できないということになりますよね。
法定相続情報証明はあくまで戸籍の束の代わりだから、戸籍に書いてないことは一切タッチできないと言われればそれまでかも知れませんが・・・
あんまり簡素すぎる物を発行されると、かえって誤解を生じることもある様な気もします。

・あと、これは我々司法書士の事情の話ですが、今回の制度で、法定相続情報証明の申し出を親族以外の代理人がするには我々の様な資格者に限定することになりましたが、これは法定相続情報証明の法律の話で、司法書士法では業務範囲について今回は改正されていませんので、例えば、不動産の相続登記を申請するために法定相続情報証明の申し出をするんだというのであれば、相続登記の申請は司法書士の業務範囲ですから、引き受けることが可能ですが、この法定相続情報証明の申し出をすることだけを目的に司法書士に依頼はできないと思われます。
もっとも、申し出をするためには「目的」を書く欄がありますので、今するかどうかはともかく、相続登記なり預金の払い出しなりの目的がないと、そもそも申し出はできないみたいですけどね。
我々がここにこだわるのは、業務範囲に入るかどうかで、戸籍を集める際に司法書士の職務上請求書が使えるかが問題になるからです。
例えば、被相続人の預金を払い出すために、この証明の申し出をするのであれば、預金の払い出しは司法書士の正規の業務範囲にあたらないし、法定相続情報証明の申し出も司法書士の業務範囲に入らないので、司法書士が職務上請求書で戸籍を集めることは職務上じゃないので違法となる可能性が高くなります。
司法書士会の研修では、そういう場合は司法書士法ではなく司法書士法施行規則に書いている財産管理業務(われわれは31条業務と呼んでますけどね。なんか先進的な司法書士達には「なんでもできる」と解釈するみたいな規定です)にあたるので、依頼者から委任状をもらって、「戸籍謄本住民票の写し等の請求書2号様式(職務上請求書じゃありません)」を使いなさいと言ってましたが、いまだにどうして預金の払い出しが財産管理業務なのか納得していない私としては、大丈夫だと言い切れる判例でも出ない限りは、恐ろしくてそんなマネはできないなと思っています。

まあ、パッと思い浮かぶ便利じゃなさそうなところは、そんなところです。
なんか、これで相続登記が進んで空き家対策になるとか言いますが、別に戸籍を集める必要がなくなるわけでもなし、どうしてそうなるのか頭抱えています。
まあ、たしかに被災地とかで、物件はあるけど、境界もメチャクチャになって現時点では遺産分割協議に乗せられないけど、将来処理するときのために証明をもらっておくとか、ピンポイントで便利な面もあるのかもしれませんが、これだけの大きな制度ですから、そんなイレギュラーじゃなくて、オーソドックスな場面に役立つ様な制度にして欲しかったです。
ひょっとしたら、これから制度を運用していく中で、そういう所も徐々に修正していって使いやすい制度になっていくのかも知れませんけどね。
 
  
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