我々司法書士の仕事で不動産の相続登記というものがありますが、それに関連して「遺言」という書類に接することがよくあります。
いろんな種類の遺言がありますが、ほとんどは公正証書遺言と自筆証書遺言です。
前者は公証役場の公証人の先生に全文書いてもらう形式で、後者は遺言を残す本人が全文手書きで作成する形式です。

形式の詳しい説明は置いとくとしまして、相続手続等をやっていると、時々思うのです。
世の中というのは不思議なもので、自分の死後に相続人間で揉めるような可能性のある方や、独り者で相続人がいないのに大きな財産を持った方といった、早い話が我々専門職が「遺言を作っておいた方が良いのにな」と思うような方に限って、遺言は作っておらず、逆に、さしてそういう心配のなさそうな方に限ってキチンと遺言を作っているなと…
まあ、後者に該当する方は、本当に素晴らしい方だなと頭の下がる思いなのですが、前者の方については、なんといいましょうか「なぜなんだろう」という気持ちが強くあります。
わかった上で、「自分が死んだ後のことなんか野となれ山となれ」なんて思っている方はあまりいらっしゃらないと思うので、もし、「自分の死を前提にした書類を作るなんて縁起でもない」という考え方が社会に深く根ざしているとすれば、ある意味我々法律職の広報活動の怠慢なのかもしれませんね。

私自身は、遺言というものは遺言をする方が自発的に元気なうちにするもので、それこそガンで余命を宣告されたとか死を前にして相続人の一部から働き掛けでバタバタ作るとか、それこそ縁起でもないと思います。
まあ、時々ですが、そのバタバタの遺言すら作れるような状態じゃないという状況になって、おそらく、推定相続人間でトラブルがあるのでしょう。息がある内に不動産の名義だけ変えてくれという相談もありまして、依頼としてはお断りせざるを得ないということもあります。そんな時、相談者も切羽詰まってますし、こういう状況で断るというのは引き受けるより相当なエネルギーを使ってストレスがたまると感じます。

ちょっと話が横道に逸れましたけど、大体中学生の社会科ぐらいでは、法律としては教わらないにしても、自分を基準にして、配偶者が半分で、子供が残り半分を折半というのが相続分だというのは勉強する機会があると思いますから、それくらいは常識と考えても良いのかなと思います。
そういう関係者を思い浮かべて、自分が死んだ後、自分の財産がどう受け継がれていくか想像が出来ないとか、「こいつとこいつが折り合い悪いからな~」とか心配するタネがある方は、是非遺言を作っておいて、死んだ後の心配なんて何もせずに、自分の人生を前向きに進めていって欲しいなと思います。

そうは言っても、どうやって作るのかということですが、まずは公正証書遺言が絶対的にお勧めです。
「いきなり公証役場は敷居が高い」という方は、我々司法書士に相談されても良いと思います。
司法書士自体が公正証書遺言は作りませんけど、事前に相談者のお話を聞いて遺言の内容をまとめて公証人の先生と打ち合わせしたり、実際に作成する時に証人(公正証書遺言の作成は本人と公証人とは別に証人として立ち会う方が2名必要です)として立ち会ったりすることも可能です。

それから、あまりお勧めは出来ませんが、自筆証書遺言で作るのも一つの方法です。
遺言というのは法律でいつでも撤回できることになっていますから、気持ちの整理の上で、自分の今の気持ちを反映させるために毎年作り替えるなんて方もいらっしゃると聞いたこともあります。
公正証書遺言を毎年作り替えるのは莫大な費用が掛かりますので、そういう方はチャンと遺言について勉強した上であれば自筆証書遺言もあり得ない選択肢ではないのではないでしょうか。
あまりお勧めできないというのは、チャンと勉強して法律に則った内容で作らないと無効になってしまう確立が高いという面がまずあります。自分で全文手書きですからね。かなり知識のいる作業だと思います。
それからもう一つは、自筆証書遺言は遺言した方が亡くなったら、相続人は家庭裁判所で「遺言の検認」という手続を取らないとその遺言は使えないということです。どんな作業かというのはまた長くなるので書くのは控えますが、ちょっとした遺言なしで相続手続するくらいの手間暇が掛かります。しかも、この検認の手続はあくまで、裁判所が「本人の書いた遺言」であることを確認するだけの手続ですから、この手続をした上で、その前に書いた、キチンと遺言として書かれていなくて無効になってしまう可能性は残っています。
そんなわけで、できれば、形式で無効になることはほとんどあり得ない公正証書遺言で作っていただきたいと思います。

司法書士会では毎年2月はたしか「相続登記はおすみですか月間」だったと思いますので、今回のブログは少しこれにちなんだネタにしてみました。