久しぶりのブログの更新ですし、たまには司法書士らしい真面目なことを書いてみましょうか。

田舎で仕事をしていると、不動産登記で時々おかしな表題部所有者が登記されていて、このままでは保存登記が出来ない物件を見かけます。
氏名だけで住所の記載がないなんて可愛いもんで、例えば、「甲外〇名」と登記されている割に共同人名票がなかったり、法人格のない団体(寺院が多いようですが)名義で登記されていたり、「人民共有持主惣代○×」と名前の頭に訳のわからない肩書きが付いていたりと、まあパターンは色々です。

なんでこんな表示になったのかを書き始めると本1冊分の内容になるので省きますが、なんにせよこんな表題部所有者の内容はそもそも現在の不動産登記法では想定していない内容で、大体は旧土地台帳時代からこんなアバウトな内容で記録されて、そのまま登記簿に移記されてニッチもサッチいかなくなったものが多いような気がします。
そんな時代から登記簿を触られることのなかった物件ですから、山の中の森とか、地元の「地域全体の物」といった感じで名義はどうあれ地域で管理している土地として取り扱われているものが多く、まさに「触らぬ神に祟りなし」といった状況ですが、まれにそういう物件を触らないといけない事態が起こることもあります。
私も2度ほど処理したことがありますが、かなり難しかったですね。

処理する上で一番最初にすることで、私が最も大事なことと思うのは、登記簿の記録に関係なく現時点で誰の所有であり、その根拠は何なのかということの調査と確認です。
当たり前のことなんですけど、大概がいわくつきの物件だったりしますから、これが結構難しかったりします。
逆にこれがわかれば、表題部所有者からどのような経緯でその方の所有になったのか見えてきますので、処理の方針も見えてきます(もっとも、その方針で可能か不可能かは別の次元の話になりますけどね)。

で、そういう所がわかってきて実際にどういう方法で処理するかですが、私が過去に行った案件は前述の通り2件ありましたが、2件とも違う方法で処理しました。具体的にどんな書類を作って誰からハンコもらってなんて話はここでは伏せますが、一つ言えるのは、この手の案件は同じような事例でも、その個々の事案(実態の権利関係)に応じて処理のパターンは全く違ってくるということです。

1つは、表題部所有者を更正登記するという手段をとりました。
この手法のポイントですが、あくまで表題部所有者を「更正」するわけですから、現在の所有者に更正できるとは限りません。
現在の所有者が表題部所有者からの「承継(何代目かはともかく)」であれば、この手法は取れません。
それならば、一旦は保存登記を経て所有権移転登記をすべきですから。
この手法は、そもそも登記簿が作られた当初から表題部所有者の記載に(実体的にあるいは名称等の表示に)誤りがあり、その当初から更正後の所有者が所有していたことを証明する所有権証明書が必要になります。
因みに表題部所有者の更正登記は司法書士でも代理権を持ちます。

もう1つの案件は、不動産登記法74条1項2号、つまり判決により所有権を確認して保存登記をする方法です。
これであれば、現在の所有者にいきなり保存登記が出来ます。
しかし、こういう表題部所有者がおかしな記載の登記の場合、被告を特定することが困難な場合が多く、この手法を取れないパターンも多いと思います。
因みに「□×外○名」で共同人名票がない所謂「記名共有地」の場合は、平成10年の通達(通達の内容は「記名共有地」で検索掛けたらたくさん出てきます)を使って、登記簿に記載のある所有者□×(ほとんどの場合は本人ではなくて相続人や財産管理人でしょうが)を被告として、判決理由で証拠によって原告の所有であることの認定を受けている確定判決で保存登記は出来ます。
ただし、証拠によって認定を受ける必要があるので、主張事実すべてに立証が必要ですし、被告の欠席裁判で擬制自白になっては困るので、最低でも被告に主張事実は全て否認か不知という争う趣旨の答弁書は出してもらう必要があります。後者については何とかしてくれる裁判所もあるかも知れませんが、原則、自白が成立してしまったら立証は審査されないのが理屈ですからね。

こういう事件を処理するはとても難しいです。
難易度だけでなく時間も掛かることが多いですし、処理の出来ない事案もきっと多いのだと思います。
ただ、無事に処理が終わって思うのは、この手の案件の処理というのは、司法書士の数少ない表題部の登記の代理権を使い、裁判書類の作成や簡裁代理権まで使うことになりますので、司法書士の代理権をフルに使うことになります。しかも登記がらみで。
そういう意味では、司法書士冥利に尽きる仕事のような気がします。
あくまでも無事に終わればですけどね。